「羹に懲りて膾を吹く(あつものにこりてなますをふく)」
すごい失敗をして、次に同じような場面で必要以上に慎重になり、他人から見ると、滑稽なぐらい無駄な行動をしてしまう。ちょっとネガティブなことわざです。
使われている漢字が難しくて、何と読むのかわかりにくいですね。
では、意味や使い方について解説していきます。
読み方 | 「羹に懲りて膾を吹く(あつものにこりてなますをふく)」 |
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意味 | 前の失敗に懲りて、度を越して用心深くなることのたとえ。 |
使い方 | 用心しすぎていることを悪く言うときに使います |
英文訳 | The burnt child dreads the fire.(やけどをした子供は火を怖がる) He that has been bitten by a serpent is afraid of a rope.(蛇に噛まれた者は縄を怖がる) A scalded cat fears cold water.(煮え湯でやけどをした猫は冷水を恐れる) |
類義語 | 黒犬に噛まれて赤犬に怖じる/黒犬に噛まれて灰汁の垂れ滓に怖じる/舟に懲りて輿を忌む/蛇に噛まれて朽ち縄に怖じる/火傷火に怖じる |
羹に懲りて膾を吹く(あつものにこりてなますをふく)
「羹に懲りて膾を吹く(あつものにこりてなますをふく)」の由来は、中国の古典詩集の『楚辞(そじ)』からきています。『楚辞(そじ)』の九章「惜誦(せきしょう)」に書かれていて、「屈原(くつげん)」という人が書いたとされています。
『楚辞(そじ)』とは、中国戦国時代後期に楚(長江の中流地域)で詠われた詩集を集めた書です。前漢末に、劉向(りゅうきょう)という前漢の学者・政治家が、全16巻にまとめました。
貴族の出身の「屈原(くつげん)」は、「楚」の国の大臣を務めた政治家です。祖国を想って、大国の「秦」に対抗しようとしました。ところが、「秦」と同盟するべきとの意見を持つ他の者達が、「屈原(くつげん)」をおとしいれようと、のありもしない悪い噂を「楚」の国王の耳にいれたため、「楚」の国王に疎まれて、ついには「屈原(くつげん)」は追放されてしまいました。あっちこっちさまよい、ついには、長江支流の川に身を投げて亡くなります。
「楚辞(そじ)」の詩集で、「屈原(くつげん)」は、忠誠を尽くして君に使えたのに、迫害されて酷い扱いを受けたことをなげきます。
ついには、厲神(れいしん)《=悪神:弔う者のいない死者の霊魂で祟りをなすといわれる》に夢占いで、「お前は君主にも疎んじられ、大勢の人々の悪口によって孤立している。他人の悪口の恐ろしさを十分に考えて、「羹に懲りて膾を吹く(あつものにこりてなますをふく)」という言葉のように、しすぎるぐらい用心深くすべきなのに、自分の初志を変えようとしないとひどい目にあうぞ。」と言われたという詩集からです。
※読史余論(1712)三「心得難き事ならずや。思ふに、羹に懲りて膾を吹くの謂なるべし」 〔楚辞‐九章・惜誦〕
「羹」という漢字から、連想するのは、「羊羹(ようかん)」ですよね。「羹」は、熱いスープのことで、「羊羹(ようかん)」は中国では、羊の肉を使った熱いスープのことでした。冷めると肉のゼラチンによって固まり、煮凝りの状態になります。日本に禅僧によって伝わったとされ、禅宗では肉を使えなかったことから、精進料理として、代わりに小豆を使用して現代の「羊羹(ようかん)」の原型になったそうです。
「羹(あつもの)」とは、野菜や魚肉を入れて作る、熱い吸い物のこと。
「膾(なます)」とは、現在は酢などで味付けをした冷たい和え物のことだが、そもそもは獣や魚の肉を細かく切った肉のことでした。
「羹(あつもの)に懲(こ)りて和え物を吹く」ともいいます。
「意味」失敗に懲りて度を越して用心
「羹に懲りて膾を吹く(あつものにこりてなますをふく)」
・不用意に、熱い吸い物で口をやけどした者が、なますのような冷たい料理も吹いて冷ますという意味。
・なにもそこまで用心深くなる必要はないのに、というあざけりの気持ちを込めて使う。
・臆病な人が、いらない心配をして無意味な行動をしてしまうことが、見ていて滑稽な様子をいう。
「例文」用心しすぎて無意味な行動
「羹に懲りて膾を吹く(あつものにこりてなますをふく)」は、用心しすぎて無意味な行動をしているのを批判的に言うときに使います。悪口やあざけりなどのマイナスなイメージで使うことわざです。良く考えて、気を付けて使ってくださいね。
「熱いものに懲りて膾を吹く」という言葉使いは誤りです。
「念には念を入れる(慎重すぎるほど注意する)」の意味で使うのは誤りです。
誤用例
忘れ物がないように、「羮に懲りて膾を吹く」ほど何度も見直した。
例文1・「羹に懲りて膾を吹く」というけど、風邪を引いて、前回の受験に失敗してから、マスクを何枚も重ねてつけて風邪の防止策にしているのは違うと思う。
例文2・愛犬は、以前散歩中に、足を滑らせて、側溝に落ちてから、外に散歩に行くときに、ずっとへっぴり腰で散歩する。それじゃ、「羹に懲りて膾を吹く」だよ。
「使い方」慎重しすぎて滑稽
[chat face=”naruzou.png” name=”ためになるぞう” align=”left” border=”blue” bg=”none” style=””]「羹に懲りて膾を吹く」とは、漢字が難しすぎてなんだかわからんなぁ…。[/chat]
[chat face=”obaasan_face.png” name=”ためになるこ” align=”right” border=”green” bg=”none” style=””](あつものにこりてなますをふく)と読むんですよ。ほら、前に小籠包が熱すぎて、口をやけどしてから、なるぞうさんは、小籠包をコップの水につけてから食べるようになったじゃないですか…。[/chat]
[chat face=”naruzou.png” name=”ためになるぞう” align=”left” border=”blue” bg=”none” style=””]あれは、熱すぎて、口の中をやけどして、その後の食事ができなかったんじゃ。[/chat]
[chat face=”obaasan_face.png” name=”ためになるこ” align=”right” border=”green” bg=”none” style=””]せっかくの小籠包がすっかり冷めちゃってそれで美味しいんですか?やれやれ…。そういうのを、「羹に懲りて膾を吹く」というんですよ。[/chat]
この使い方が覚えやすいのか色々な意見はあると思いますが、この使い方は覚えやすいと考えられます。
「まとめ」「羹に懲りて膾を吹く(あつものにこりてなますをふく)」
「羹に懲りて膾を吹く(あつものにこりてなますをふく)」は、すごい失敗をして、次に同じような場面で必要以上に慎重になり、他人から見ると、滑稽なぐらい無駄な行動をしてしまう。ちょっとネガティブなことわざです。
意味は、
・不用意に、熱い吸い物で口をやけどした者が、なますのような冷たい料理も吹いて冷ますという意味。
・なにもそこまで用心深くなる必要はないのに、というあざけりの気持ちを込めて使う。
・臆病な人がいらない心配をしてしまうことが見ていて滑稽な様子をいう。
使い方は、
用心しすぎて無駄な行動をしていることを悪く言うときに使います。
失敗に懲りて、臆病になり、本来の力を発揮できないのはもったいないですよね。
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