「盾に取る」ということわざをご存じでしょうか?
盾とは、剣などの武器から身を守るためにかざす、防御の道具です。
映画の中で、西洋の騎士が片方の手に盾、もう片方の手に剣を持って戦っているシーンを見たことがありませんか?
それを、ものごとの言い訳、言いがかりの道具として利用するという意味で使います。
自分を守り、主張を通すために使えるものは、何でも利用しようというようなことですね
しかもその盾には、強い力があります。
また、逆の立場で使用する場合もあります。
そちらについては、「意味」のところで解説します。
本記事では、「盾に取る」という言葉の意味や類義語、使い方など徹底解説していきます。
読み方 | 盾に取る(たてにとる) |
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意味 | ものごとの言い訳、言いがかりの道具として利用すること |
使い方 | 自分の利益を優先したり、立場を守りたいとき |
類義語 | 出しに使う ほか多数 |
対義語 | 殺身成仁 ほか |
英文訳 | Take up the shield. ほか |
盾に取るとは
盾は、自分の前に構えて身を守る道具。
それが由来となって、ものごとの言い訳や言いがかりの道具として利用するときに使うようになりました。
自分の身を守るために、何かを利用するということです。
新星出版社『大きい活字の故事・ことわざ辞典』には、「盾」ではなく「楯」という漢字で「楯に取る」と書いてあります。
調べたところ、盾は金属や革製の防具、楯は木製の防具を指す漢字でした。
ことわざの意味である、「ものごとの言い訳、言いがかりの道具として利用すること」は、どちらの漢字を使っても構いませんが、「楯」は常用漢字ではないので(人名には使えます)、「盾に取る」を使う方が良いでしょう。
「意味」ものごとの言い訳、言いがかりの道具として利用すること
「盾に取る」は、ものごとの言い訳、言いがかりの道具として利用することが多い言葉です。
「ことわざのイメージ」
- 自分は間違ってはいないと言い訳をする。
- 悪いのは相手だと主張する。
- なにかを利用して、自分の立場をよく見せたい。
このようなイメージです。
わたし自身も、屁理屈だとわかっていながら、何かを盾に取って自分の主張を正当化してしまうことがあります。
第三者としてそういう人を見ると、あまり良いとは言えないので、自分も気をつけようと思います。
また、正しい者が悪者の盾によって攻撃を受ける場合があります。
そういう場合は、証拠を盾に取り、形勢逆転しなければなりません。
わかりやすい例をあげてみると、証拠不十分な犯人が、黙秘していれば解放されるとたかをくくっていたら、思わぬところから証言者や証拠が出てきて、警察はそれを盾に取って犯人を追い詰め、自供させたというようなことです。
こういう場合にも「盾に取る」を使いますので覚えておきましょう。
「使い方」自分の利益を優先したり立場を守りたいとき
[chat face=”obaasan_face.png” name=”ためになるこ” align=”left” border=”green” bg=”none” style=””]おじいさん、毎回おかずに醤油を足すのはやめてください。血圧のことを考えて薄味にしているのに、なんにもならないじゃないですか。[/chat]
[chat face=”naruzou.png” name=”ためになるぞう” align=”right” border=”blue” bg=”none” style=””]大丈夫じゃよ。血圧は薬で下がっとる。[/chat]
[chat face=”obaasan_face.png” name=”ためになるこ” align=”left” border=”green” bg=”none” style=””]薬を盾に取らないでください。飲んでいること自体が病気なんですから。[/chat]
法規を盾にとって理屈を言う技術と法律学とは別物である。法律学のような高尚な学問を研究せずとも、法規に精通して形式的の理屈をいい有無をいわせず相手の議論を撃破したり要求をしりぞける技術を修得する必要がある。世の中では、とかく法科万能のなんのといって、いかにも法律的知識ないし技術を蔑視するようなことをいうけれども、いやしくも役人として出世しようとするかぎり、法規を盾にとる術に熟達することを要する。
「例文」自分の利益を優先したり立場を守りたいとき
自分の利益を優先したり立場を守りたいときに使うようにしましょう。
私はお金を盾に取って、発展途上国に学校を設立した。
何かを利用するという意味では、お金はあてはまりますが、この場合それを人のために使っています。
ここで「盾に取る」を使うのは間違いです。
妻が子どもの答案用紙を盾に取って、塾に通わせたいと言ってきた。
その点数を目にしたら、同意するしかなかった。
よほど成績が悪かったのでしょうね。
目に見える形で見せられると、断れませんよね。
「類義語」出しに使う ほか多数紹介
類義語のすべてに共通しているのは、自分の利益のために、何か(地位や道具)を使って、自分が不利にならないようにすることです。
出しに使う
自分の利益のために、ほかのものを利用すること。
例:八百屋さんに行き、子どもを出しに使いきゅうりを1本多く入れてもらった。
狐虎の威を藉る
弱いものが、強い者の権威を頼みに威張ること。
笠に着る
自分の地位を利用して相手を従わせる。
自分の施した恩徳をいいことに、自分に都合の良いようにふるまうこと。
例:権力を笠に着る/権威を笠に着る
張り子の虎
実際には弱いのに、強そうに見せかけている人。
例:あの男は、図体ばかり大きいが中身は張り子の虎だな。ちょっと脅かすと、すぐに尻尾を巻いて逃げて行ったよ。
牽強付会
都合の良いように無理に理屈をこじつけること。
免罪符にする
自分のことを正当化するために、ほかのものを道具とすること。
免罪符とは、中世ローマのカトリック教会が、罪を犯した者に対して、現世における処罰を免除するために発行した証書のこと。
空威張りする
実力もないのに、うわべだけ勢いがあるようにみせかけていること。
虚勢を張る
自分の弱点を隠すために、強がった様子でふるまうこと。
例:あいつは、大した学もないのに虚勢ばかり張りたがる。
「対義語」四字熟語を2つ紹介
はっきりとした対義語はありませんが、「盾に取る」が自分の利益を優先したり、立場を守りたいときに使うものなので、自分を犠牲にして、まずは人のために動くということで考えてみました。
殺身成仁
自分を犠牲にして、世のため人のために尽くすこと。
殺身成仁といえば、マザーテレサが一番に頭に浮かびます。《マザー・テレサの名言》
飽くことなく与え続けてください。残り物ではいけません。痛みを感じるまでに、自分が傷つく程に与え尽くしてください。
先難後獲
困難なことを先にして、利益を後回しにすること。
まずは人のために困難なことを行い、自分の利益になることは後回しにすること。
「英文」Take up the shield.
Take up the shield.
盾を取る・盾を取りなさい・盾を手に取る・盾を取れ
というような和訳になります。
日本語でいうところの「盾に取る」とは少し違うのですが、こちらをはじめ次のような言い方もありますので、参考にしてみてください。
Take on the shield.
Take it on the shield.
「ものごとの言い訳、言いがかりの道具として利用すること」を英文にすると
Use as an excuse for things, as a tool for making excuses.
となります。
Take up a defensive position.
守勢に回る・守りを固める・身構える
Take up a defence.
守備を固める
Take up a defence against.
抗弁を張る
抗弁とは、裁判において相手の主張に対して自己の立場を堅持して反論すること。
今回は、「take up」を使用したものを中心に紹介しました。
「take」は取る、「up」は上がるが代表的な意味ですが、合わせて使うと「~を取る」となります。
その他の使い方もいくつか紹介します。
●何かを始める・着手する
●空間を物が占める・圧迫する
●時間を消費する・使う
●誰かを支援する・援助する
●何かを引き受ける・担う
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「盾に取る」とは、ものごとの言い訳、言いがかりの道具として利用することでした。
自分の利益を優先したり、立場を守りたいときに使うことが多いですが、その逆もあるということを覚えておきましょう。
●私利私欲のために、なにかを道具とする場合に使う。
●悪事を暴くときの証拠などを盾に取って、形勢逆転する場合にも使う。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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