あなたは匹夫の勇という言葉を知っていますか?
匹夫之勇と四字熟語で表記されることも多く、「思慮も分別もない、ただのその時かぎりのつまらない勇気」という意味です。
- 意味 思慮も分別もない、ただのその時限りのつまらない勇気
- 使い方 考えなしにいきり立つ人の行動をたしなめるとき
- 由来 孟子「梁恵王・下(りょうけいおう・げ)」
それではもっと詳しくみていきましょう。
読み方 | ひっぷのゆう |
ローマ字 | hippunoyuu |
意味 | 思慮も分別もない、ただのその時限りのつまらない勇気 |
使い方 | 考えなしにいきり立つ人の行動をたしなめるとき |
類義語 | 小人之勇(しょうじんのゆう) 猪突猛進(ちょとつもうしん) 暴虎馮河(ぼうこひょうが) |
対義語 | 大義之勇(たいぎのゆう) 大勇(たいゆう) |
英文 | foolhardiness |
匹夫の勇とは
匹夫の勇の由来は、中国儒教の思想家である孟子の「梁恵王・下(りょうけいおう・げ)」です。この中で孟子が斉国の宣王に隣国とのいい関係を築くためのアドバイスをしているシーンに登場します。
孟子は宣王に「仁の徳で自国を治めれば隣国ともうまくいくでしょう」と説いたところ、宣王は「それは素晴らしいが、私には勇敢を好む悪い癖がある」と返します。
それに対し孟子は、「王よ、例えば剣を握って相手を睨みつけ、かかってこいと言ったとします。これは匹夫の勇、すなわち思慮が浅く腕力だけの勇気であり、たった一人を相手にするだけです。どうかこんな小さな勇気ではなく、大きな(仁義や道徳を重んじる)勇気を持ってください。」と返しました。
これがそのまま「匹夫の勇」として使われるようになったのです。
「意味」分別もない、その場限りのつまらない勇気
「匹夫の勇」を説明する言葉として、つまらない勇気、思慮も分別もないその場限りの意味のない勇気、虫けらのような価値のない勇気という、相手を諫めるような、ともすると見下したような意味合いのキーワードが目立ちます。
それもそのはず、「匹夫」という言葉は「身分が低く教養のない人、分別をわきまえず浅はかな人」という意味を持ちます。
「匹」は「社会的に地位が低いこと」を、「夫」は「男性」を意味しています。
頭に血が上って後先を考えない行動をしようとしている相手に、「無謀な行動をしてはいけないよ」となだめる目的で使われることが多いと思いますが、使い方を間違えると相手を見下した意味合いが強くなってしまうので気を付けましょう。
ことわざのイメージ
考えなしで勢いだけ、力任せのつまならい勇気
「使い方」考えなしの勢いだけの行動をたしなめる
なるぞうおじいさんとなるこおばあさんの会話をみながら、使い方を確認してきましょう。今日のなるぞうおじいさんは何やらお怒りのようです。
てやんでぃ!殴り込みに行くぞ!
な、なるぞうじいさん、どうしたんですか?
また国が税金上げやがった!さぁ、なるこばあさんや、一緒に国会に殴り込みにいこうじゃないか!
え?おじいさんと私の2人で今から国会に?
おじいさん、それは匹夫の勇というものですよ。理性と知性にあふれた人だと思ってたのに・・・とにかく落ち着きましょうね。
税金が上がるのは私も困りますが、なるぞうおじいさんがおばあさんと2人で国会に行ったところで解決にはなりません。ましてや殴り込みなんて、おじいさん今日はどうしたんでしょうか・・・
考えもなくその場の勢いだけの勇気、まさに匹夫の勇の行動と言えます。
良い例と悪い例「匹夫の勇」
「匹夫の勇」悪い例
逆境を乗り越えて人生の成功を勝ち取った君はなんて勇気のある人なんだ。まさに匹夫の勇だね。
※その行動や勇気を心からほめたたえたいときに使う言葉でありません!!
「匹夫の勇」良い例
あの怪物に武器もなしに一人で立ち向かおうとするなんて何を考えているんだ。まさに匹夫の勇だ。
使い方で気を付けたいのが、「匹夫」=「身分が低く道理がわからない人」という意味を持っている点です。
転じて「思慮の足りない人、軽率な人」という意味合いが強いですが、相手を見下した表現も含むことを心にとめておきましょう。使い方には配慮が必要です。
匹夫の勇「類義語」を3つ紹介
小人の勇(しょうじんのゆう)
つまらない人間の軽はずみで思慮の浅い勇気
猪突猛進(ちょとつもうしん)
目標に対して向う見ずに一直線に突き進むこと。
暴虎馮河(ぼうこひょうが)
血気にはやって向う見ずに命知らずな行動をとること。
匹夫の勇「対義語」を2つ紹介
大義の勇(たいぎのゆう)
人として守るべき最高の道義にかなった、ここぞという場面で奮い起こす勇気。
大勇(たいゆう)
本当の勇気、必要なときにあらわす真の勇気。
「英文」foolhardiness
foolhardinessを直訳すると「猪突」となります。意味は「向う見ず、無鉄砲、無謀」です。
まとめ
「匹夫の勇」の意味や使い方をもう一度おさらいします。
- 意味 思慮も分別もない、ただのその時限りのつまらない勇気
- 使い方 考えなしにいきり立つ人の行動をたしなめるとき
- 由来 孟子「梁恵王・下(りょうけいおう・げ)」
匹夫の勇、あまり聞きなれない言葉かもしれません。
ついかっとなって後先考えすに行動しそうになった時、やけっぱちになって「この際なんでもやってやるぜ!」と崖っぷちで叫びそうになった時、この言葉を思い返してみてください。
誰かに使うときは相手への配慮を忘れずに、相手が自分の考えの足りなさにはたと気付くような使い方ができるといいですね。
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