今回は『贔屓の引き倒し(ひいきのひきだおし)』ということわざを紹介します。
「贔屓する」は、特定の人を特別扱いするという意味だと多くの人は知っているでしょう。
では「贔屓」とは何の意味か、その贔屓を「引き倒す」ことはどういうことかを知っている人は少ないと思います。
贔屓ってどういう意味かしら?
贔屓する、ご贔屓は聞いたことはあるが、それを引き倒す?
本記事では『贔屓の引き倒し』について、詳しく解説していきます。
- 『贔屓の引き倒し』の由来と意味
- 使い方の良い例、悪い例
- 類義語と英文について解説
読み方 | ひいきのひきだおし |
ローマ字 | hiiki no hikidaoshi |
意味 | 贔屓し過ぎて、返ってその人を不利にすること。 |
使い方 | 特別扱いをしたことで周囲の人の反感を買ってしまい、返ってその人に迷惑をかけてしまったとき。 |
類義語 | 過ぎたるは猶及ばざるが如し、甲張り強くして家押し倒す、寵愛昂じて尼になす |
対義語 | ー |
英文 | Kill with kindness |
贔屓の引き倒しとは
「由来と意味」『贔屓』とは中国の伝説上の生き物
まずは『贔屓の引き倒し』の中にある「贔屓」の由来と意味を説明しましょう。
贔屓はもともと「ひき」という読み方でしたが、慣用読みとして「ひいき」となりました。
中国語の「贔屓」は次のように2つの意味があります。
まずは①の「力を入れる」が転じて「特別扱いをする」という意味になったようです。
もう一つの意味として、②のウミガメのような伝説上の生き物とありますが、この生き物は重い物を背負うことが好きで、石碑や石柱の台座としてよく使われます。
その台座を引っ張ると石碑や石柱が倒れてしまうので、そこから「贔屓の引き倒し」という言葉が生まれました。
つまり贔屓という言葉には2つの意味があり、その2つ意味をかけてできたことわざなのです。
ことわざのイメージ
気に入って特別扱いしたことが、かえって迷惑になってしまうイメージ
「使い方」肩入れしたのがかえって仇となる
なるぞうさんが同僚のなるこさんに愚痴を聞いてもらいます。
今年の新入社員のAくん、めちゃくちゃ優秀で仕事ができる子なんだ。
でも部長がやたら特別扱いするから困るんだよね。
そうみたいね。
先日も部長がAくん一人だけ食事に誘っているのを見たわ。
課長や係長をすっとばして、Aくんに直接あれこれ指示しているからね。
あれじゃあ課長たちは面白くないだろうし、Aくんもいささか困ってるよ。
このままだと贔屓の引き倒しになるわね。
Aくん、居づらくなって辞めなきゃいいけど。
Aくんにとってはありがた迷惑で、ちょっと気の毒ですね。
良い例と悪い例「贔屓の引き倒し」
「贔屓の引き倒し」悪い例
「お姉ちゃんだから妹に優しくしなさい」ってお母さんはいつも言うけど、それって贔屓の引き倒しじゃない!
「贔屓の引き倒し」良い例
サッカー部の顧問の先生が息子を特別扱いするのでチームメイトたちから疎まれた。これではまるで贔屓の引き倒しだ。
『贔屓の引き渡し』は、ある人が特別扱いをされて、その特別扱いされた人が不利益をこうむる意味で使われます。
つまり特別扱いをされた人と不利益をこうむった人は同一人物ということです。
悪い例のケースは、特別扱いされたのは妹、不利益をこうむったのは姉ですね。
このような場合は、「依怙贔屓」を使うのが適切です。
「類義語」『贔屓の引き倒し』と似たことわざを3つ紹介
甲張り強くして家押し倒す
「甲張り」とは家のつっかえ棒で、家が倒れないように甲張りを強くし過ぎたら、家が倒れてしまったということ。
転じて、必要以上にやり過ぎると逆効果になってしまう、という意味になりました。
過ぎたるは猶及ばざるが如し
何事もやり過ぎはよくない、中庸が大切である、という意味です。
『論語』の「子曰、過猶不及(子曰く「過ぎたるは猶ほ及ばざるがごとし」と)」が由来じゃよ。
寵愛昂じて尼になす
親が娘を溺愛し過ぎて嫁にやる機会を失い、ついには尼にしてしまうこと。
度が過ぎたかわいがりは本人のためにならない、という意味です。
「英文」Kill with kindness
“kill with kindness” は「ありがた迷惑」という意味で、つまりは「贔屓の引き倒し」となります。
“kill”は「殺す」、“kindness”は「親切」ですね。
対象者がはっきりしている場合は、“kill (someone) with kindness” で「(誰か)を甘やかしてだめにする」または「(誰か)に余計なおせっかいを焼く」という意味にもなります。
余談ですが、アメリカでは“kill them with kindness”という表現があり、自分に酷い仕打ちをした人に対して優しく接する、という意味です。
酷いことをした相手にやり返すのではなく優しくすることで、相手に後悔や反省の念を持たせて優しい人に生まれ変わらせるという、とても素敵な言葉なのですね。
まとめ
『贔屓の引き倒し』の解説はいかがだったでしょうか?
ここで改めておさらいしておきましょう。
- 意味:贔屓し過ぎて、返ってその人を不利にすること。
- 使い方:特別扱いをしたことで周囲の人の反感を買ってしまい、却ってその人に迷惑をかけてしまうとき。
人の上に立つ人は特に『贔屓の引き倒し』にならないよう、自分の下にいる人たちの扱いに気をつけた方が良いですね。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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