お互い切磋琢磨できる関係性の中で、自分自身も成長できるようになったなと思うことはありませんか?以前は怠け者だった人が、環境が変わったことで努力家になったり。そんな人は、まさに「麻の中の蓬」と言えるでしょう。
読み方 | 麻(あさ)の中(中)の蓬(よもぎ) |
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意味 | 善人と接することで、自然に影響されて善人になるという例え |
使い方 | 環境によって人格が形成されるという意味 |
英文訳 | If you get along with a good person, you can become a good person’s companion.(いい人と仲良くなればいい人の仲間になれます。) |
類義語 | 朱に交われば赤くなる/紫蘭の室に入るが如し |
対義語 | 泥中の蓮/捏つすれども黒まず |
麻の中の蓬
「麻の中の蓬」は、元々悪人であっても、環境によって善人になることができるという例えです。
どのような意味があるのか、またきちんと使い分けるための解説を詳しくしていきます!
「由来」良い人と接することで、自然に影響されて良い人になる
「麻の中の蓬」は、荀子が記した『勧学』「蓬麻中に生ずれば扶 (たす) けざるも直し」に由来することわざです。
「蓬は横に広がっていく植物だが、天に向かってまっすぐに伸びる麻の中に混じっていれば、麻のようにまっすぐ育っていく。この現象のように、人も善良な友人と交わるようにすれば、その感化で善良になれるという意味。」
現代言語研究会(著)『故事ことわざの辞典』(あすとろ出版 2007・9)
蓬(よもぎ)は、よもぎ餅などが有名ですよね。聞き覚えのある植物ですが、実際に生えているところを見たことがない方も多いのではないでしょうか?では、どのように生えているのか、見てみましょう。
■蓬(よもぎ)
確かに、葉が横に広がっているのがわかります。
では、麻はどうでしょうか。
■麻(あさ)
麻は真っ直ぐ伸びていますね!
このように、麻と蓬の特徴の違いを捉えた、面白いことわざですね。
「例文」身近な人が成長している様子
「麻の中の蓬」の例文を紹介していきます。
・「勉強が得意ではなかった娘の教育の環境を整えたら、麻の中の蓬のように、賢い人に育ちました。」
・「今後の人生のために、善い人と接しなさい。麻の中の蓬と言うでしょう。」と息子に教えました。
「中学三年生の時にぐれかけていた長男が、あの高校でいい友達に恵まれてクラブ活動に専念している。麻の中の蓬とはよく言ったものだ。」
東京書籍編集部 (編集)『慣用句・故事ことわざ・四字熟語 使いさばき辞典』(東京書籍 2014・7)
このように、元々素質があったわけではないものの、良い環境に身を置くことで良い影響を受けるという場合に使用できます。
「使い方」仲間が変われば心も変わる
おじいさん、最近毎朝散歩して、心なしか前より優しくなったんじゃないかしら、前は怒ってばかりだったのに。
最近散歩仲間が出来たんじゃよ。早起きは三文の徳というものだねえ。
あら、いいことじゃないの!まさに麻の中の蓬というものね
この使い方が覚えやすいのか色々な意見はあると思いますが、この使い方は覚えやすいと考えられます。
「類義語」麻の中の蓬・3つ紹介
「麻の中の蓬」のように、人間関係を表すことわざは多くあるので、使い分けが難しいと思います。
ここではきちんと使い分けられるように、「麻の中の蓬」に似た意味を持つことわざを紹介、比較していきます!
■紫蘭の室に入るが如し
意味「香を放つ紫蘭を置いてある部屋に入っていると、いつの間にかそのような香りが身に染みつく。それと同じで、立派な人間と交際すれば良い影響を受けるという事。」
参照 東京書籍編集部 (編集)
- 『慣用句・故事ことわざ・四字熟語 使いさばき辞典』東京書籍 2014・7
- 『慣用句・故事ことわざ・四字熟語 使いさばき辞典』東京書籍 2014・7
「紫蘭の室に入るが如し」については、「麻の中の蓬」と同様、環境によって良い影響を受けるということを意味しています。
■朱に交われば赤くなる
意味「種の中に入れた物が赤くなることから、人は交わる友によって善にも悪にも感化されるというたとえ」
参照 東京書籍編集部 (編集)『慣用句・故事ことわざ・四字熟語 使いさばき辞典』東京書籍 2014・7
「朱に交われば赤くなる」については、良くも悪くも影響を受けるという意味です。「麻の中の蓬」とは異なり、「良い影響を受けること」だけに意味を限定していないことがわかります。
また、今回紹介した類義語どちらにも共通するのは、「環境によって人は変わる」ということです。「朱に交われば赤くなる」が「良くも悪くも変わる」という意味があるのに対して、「紫蘭の室に入るが如し」「麻の中の蓬」では、「良い影響を受ける」という意味に限定されていることがわかります。
■類は友を呼ぶ
「性格や考え方、趣味などが共通している物同士は気が合うので、自然に寄り集まって仲間を作る」
参照 東京書籍編集部 (編集)『慣用句・故事ことわざ・四字熟語 使いさばき辞典』東京書籍 2014・7
「類は友を呼ぶ」には、似た者同士が自然に集まるという意味があるのに対し、「麻の中の蓬」は環境によって人格が変わるという意味の違いがあります。
このように、一見似ているように思えることわざでも、比較してみると違いがあることがわかりますね。
意味をしっかり理解して使い分けましょう!
「対義語」麻の中の蓬・2つ紹介
泥中の蓮(でいちゅうのはす)
俗世にあっても、清廉な人物のたとえ。また、けがれた環境の中でも美しさを保っているもののたとえ。
周りの人は、人を蹴落として上へ這い上がろうとしている中、彼は人と協力したり助けたりして這い上がろうとしている。 まさに泥中の蓮である。[
捏つすれども黒まず(てつすれどもくろまず)
本当に心が潔白で、意志が堅固な人は、どのような環境に置かれようとも、その影響を受けて汚れてしまうことはない。
『論語』陽貨篇が由来となっています。
論語:孔子とその高弟の言行を、孔子の死後に弟子が記録した書物
陽貨:陽虎のこと、中国春秋時代の魯の政治家
「英文」麻の中の蓬・紹介
訳:いい人と仲良くなればいい人の仲間になれます。
- If:もし
- get along with :仲良くする
- good person:良い人
- can become :~になることができる
- person’s companion:仲間
「麻の中の蓬」まとめ
「麻の中の蓬」の意味について、最後にまとめます。
・善人と接することで、自然に影響されて善人になるという例え
・良い環境によって善人になることができる事の例え
良い環境が自分の成長につながった経験が、あなたにもあるのではないでしょうか?
自分の個性を大切にしながら、なりたい自分になる環境に身を置くことが大切かと思います!
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