「騏驎も老いては駑馬に劣る」(きりんも おいては どばに おとる)という言葉を、聞いた事はありますか?
使われている漢字も普段あまり目にしないし、読みづらいと感じる方も少なくないかもしれません。
「騏驎も老いては駑馬に劣る」とは、すぐれた人物も年老いては、その働きや能力が普通の人にも及ばなくなることのたとえです。
残念なことではありますが、寄る年には勝てないということですね。
本記事では、語句の意味また使い方そして英文での表現方法まで幅広く
ご紹介します。
では、さっそく「騏驎も老いては駑馬に劣る」について見て行きましょう!
読み方 | 騏驎も老いては駑馬に劣る (きりんもおいてはどばにおとる) |
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ローマ字 | Kirin mo oitewa doba ni otoru |
意味 | すぐれた人物も年老いては、その働きや能力が普通の人にも及ばなくなること |
使い方 | 過去に華々しい成果を上げてきた人が、年齢を重ねたために全く成果を出せなくなった時 |
言い換え言葉 | 騏驎も老いては駑馬に劣る ⇒老いては騏驎も駑馬に劣る |
英文訳 | Even hares pull a lion by the beard when he is dead. (ライオンが死んだ時は、ウサギでさえそのヒゲを引く) |
類義語 | 昔千里も今一里/昔の剣今の菜刀 |
騏驎も老いては駑馬に劣る とは
「由来」『戦国策・斉策』にある故事
中国の逸話をまとめた「戦国策」という本の中の「斉策」に
書かれているお話です。
「戦国策」とは、
中国の戦国時代の約250年間の、縦横家と呼ばれる、弁舌と野望をもって戦国時代の各国君主の外交的駆け引きに奔走した策士たちの権謀術策を、 12ヵ国に分けて書いた書です。
[chat face=”panda.jpg” name=”パンダさん” align=”left” border=”gray” bg=”none”] 権謀術策 ⇨ 巧みに人をあざむく策略のことですよ。 [/chat]
その「戦国策」の中の「斉策」とは、
「戦国七雄」の一国であった「斉」の国の逸話です。斉国は、強盛を誇り、秦が他の五国を滅ぼした後も存続しましたが、秦によって最後に滅ぼされました。
[chat face=”panda1.jpg” name=”パンダさん” align=”left” border=”gray” bg=”none”] 戦国七雄 ⇨「燕(えん)、斉(せい)、楚(そ)、秦(しん)、韓(かん)、魏(ぎ)、趙(ちょう)」という七国ですよ。 [/chat]
「蘇秦」とういう縦横家が「斉」という国の王の対外政策について意見を述べます。
蘇秦が言いました。
『「騏驎の衰うるや駑馬之に先だつ」と申します。どんな名馬も年をとると、そのへんのつまらない馬の方が早く走るようになるのです。これからは、他国に対して大きくでないように致しましょう。』
[chat face=”panda.jpg” name=”パンダさん” align=”left” border=”gray” bg=”none] 馬のはなしのようですね。
どうゆうこと? [/chat]
「意味」すぐれた名馬であっても、年老いると足ののろい普通の馬以下になる
「騏驎も老いては駑馬に劣る」とは、そのまま訳すると、
すぐれた名馬であっても、年老いると足ののろい普通の馬以下になるという意味です。
それでは、「騏驎」と「駑馬」について見ていきましょう。
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「騏驎」とは、一日に千里も走るすばらしい馬。
駿馬のこと。
[/jin-iconbox08]
[chat face=”panda.jpg” name=”パンダさん” align=”right” border=”gray” bg=”none”] キリンさんじゃないですよ。
間違えないようにしましょ。 [/chat]
[jin-iconbox08]
「駑馬」とは、足ののろい駄馬。
転じて、平凡な馬・愚かな馬のことをいう。[/jin-iconbox08]
[chat face=”panda1.jpg” name=”パンダさん” align=”left” border=”gray” bg=”none”] 駄馬は「だば」とも読みます。
荷物を運ぶ馬のことで、乗馬にならないので下等の馬とされてます。 [/chat]
[jin-iconbox02]漢字の偏に注目!
★馬偏の騏を使う「騏驎」⇨ 一日に千里も走るすばらしい馬。駿馬のこと。「騏驎も老いては駑馬に劣る」
★鹿偏の麒を使う「麒麟」⇨ 中国神話に登場する伝説の動物。口から火を吹きながら走る。
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「騏驎も老いては駑馬に劣る」とは、すぐれた名馬であっても、年老いると足ののろい普通の馬以下になるという意味になることがわかりましたね。
「ことわざのイメージ」
すぐれた人物も年老いては、その働きや能力が
普通の人にも及ばなくなることのたとえ。
[jin-iconbox10]「騏驎も老いては駑馬に劣る」 ⇒「老いては騏驎も駑馬に劣る」と表すこともあります。[/jin-iconbox10]
「使い方」過去に華々しい成果を上げてきた人が、年齢を重ねたために全く成果を出せなくなった時
[chat face=”naruzou.png” name=”ためになるぞう” align=”left” border=”blue” bg=”none” style=””]村の神社の相撲大会で、金造さんが1回戦で負けたぞな。[/chat]
[chat face=”obaasan_face.png” name=”ためになるこ” align=”right” border=”green” bg=”none” style=””]まあ、驚いた!
金造さんは昔、相撲大会で10連覇した人ですよ。[/chat]
[chat face=”naruzou.png” name=”ためになるぞう” align=”left” border=”blue” bg=”none” style=””]金造さんでも年には勝てんの。
始めて相撲大会に出場した小僧に負けたんじゃよ。「騏驎も老いては駑馬に劣る」ということじゃな。[/chat]
[chat face=”obaasan_face.png” name=”ためになるこ” align=”right” border=”green” bg=”none” style=””]金造さんはこれまでよく頑張って来られましたよ。そろそろゆっくりしてもらいましょうよ。[/chat]
このことわざの由来や意味がつかめたところで、
例文を使って、使い方を練習しましょう。
「例文」すぐれた人物も年老いては、その働きや能力が普通の人にも及ばなくなること
彼は、年を取って「麒麟も老いては駑馬に劣る」となったね。昔からそうでもなかったけどね。
[jin_icon_unlike color=”#e9546b” size=”25px”]Point「麒麟も老いては駑馬に劣る」を使う時は、昔はすぐれた成果を出した人物だったことが前提です。そして年が過ぎ、今はもうすっかりそのようなことができなくなっているという、年老いてしまった現在を表現するものです。
今は、 見る影もなく「麒麟も老いては駑馬に劣る」となってしまったけれど、彼は、昔は本当に凄かったんですよ。
[jin_icon_like color=”blue” size=”25px”]Point 昔はすぐれた人物だったこと、そして年が過ぎ、今はもうすっかりそのようなことができなくなっているという過去と現在の対比があります。
「麒麟も老いては駑馬に劣る」を使った表現を見てみましよう。
吉川英治 三国志からご紹介します。
騏驎も老ゆれば、駑馬というではないか、そのむかしの豪雄とて、どれほどのことがあるものか
(むかしは、ずばぬけて武勇に優れていたけれども、今はもう気にするほどのことはない。)■吉川英治 三国志 より抜粋
「類義語」騏驎も老いては駑馬に劣る・2つ紹介
★ 昔千里も今一里 (むかしせんりも いま いちり)
昔は千里を走ることができた名馬も、今では老いて動きが鈍くなり、一里しか行けないという意味から、優れた能力を持つ者でも、年を取れば人並み以下になってしまうことのたとえ。
★ 昔の剣今の菜刀 (むかしのつるぎ いまの ながたな)
昔、剣として用いられたものも、今はせいぜい菜切り包丁の役にしかたたない。すぐれた人も年老いた今となっては物の役にたたなくなっているというたとえ。また、すぐれたものも、古くなると時世に合わなくなることのたとえ。
「対義語」騏驎も老いては駑馬に劣る・1つ紹介
★ 腐っても鯛 (くさってもたい)
腐っても鯛とは、すぐれたものは多少悪い状態になっても、本来の価値を失わないというたとえ。
「英文」騏驎も老いては駑馬に劣る・1つ紹介
[jin-iconbox02]
Even hares pull a lion by the beard when he is dead.
(ライオンが死んだ時はウサギでさえそのヒゲを引く)
[jin_icon_pencil color=”#e9546b” size=”13px”]hares : 野うさぎ (複数形)
[jin_icon_pencil color=”#e9546b” size=”13px”]pull someone by 〜 : someone (人や動物など)の〜を引っ張る
[jin_icon_pencil color=”green” size=”13px”]pull a lion by the beard : ライオンのあごひげを引っ張る
[/jin-iconbox02]
まとめ
それでは、ポイントをまとめておさらいしましょう。
- 「騏驎も老いては駑馬に劣る」とは、すぐれた人物も年老いては、その働きや能力が普通の人にも及ばなくなること。
- 過去に華々しい成果を上げてきた人が、年齢を重ねたために全く成果を出せなくなった状況の例えとして使う。
「騏驎も老いては駑馬に劣る」ということわざは、誰しも年老いて衰えていくという自然の摂理の厳しさが表現されていましたね。
過去の勇壮な姿からかけ離れた悲しい現実を言葉にすることになりますから、使う時には、失礼にあたらないように注意が必要です。
積極的に使ってみるというよりは、見聞きした時に意味がわかれば良いことわざです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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