濡れ手で粟
はてさて、一体どんな意味を持つことわざなのでしょう?
栗じゃないの?粟って何??泡!?
とあわあわしている皆さんのために、使い方や対義語・英文を徹底解説しちゃいます!
それでは、Let’s スタート!
読み方 | 濡れ手で粟(ぬれてであわ) |
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ローマ字 | Nurete de awa |
意味 | たいした努力や苦労もなしに、楽々と大きな利益を得る事 |
使い方 | 趣味で作っているアクセサリーを、ちょっとしたお小遣い稼ぎにとフリーマーケットに出したら、思いのほかたくさん売れて濡れ手で粟の大儲けだ |
英文訳 | to make one’s fortune at one stroke / on the gravy train |
類義語 | 一攫千金 / 漁夫の利 |
濡れ手で粟とは
濡れた手で粟を掴めば、粟粒がそのまま手に付いてくる様子から、なんの苦労もせずに利益を得る事を「濡れ手で粟」という様になった。
このことわざは、漢字や意味の取り間違い等、揺れが見られる。
1つ目は「粟」の部分。
同音というだけでなく、水に濡れた手という所から「泡」を連想し「濡れ手で泡」という勘違い。
ただこの誤解は古くからされており、昭和57年に刊行された北村孝一監修の『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)によれば、明治41年に刊行されたことわざ辞典『日本俚諺大全』にも「濡手で泡」の形で収録されている。
「泡となって消える」という連想から、いくら努力しても実りがない事の意味だとの誤解からきているものと思われる。
2つ目は、「濡れ手で粟」ではなく「濡れ手に粟」という言い方。
この表現で掲載している辞書もある様だが、これだと濡れている手に偶然粟がたくさん付いたという「棚から牡丹餅」の様な意味となってしまうため、間違いとされている。
このことわざの興味深い所は、昭和47年〜昭和51年刊行された小学館国語辞典編集部編集の『日本国語大辞典』(小学館)によると、明治32年に出版された横山源之助の『日本の下層社会』(岩波書店)にて「濡れ手に粟」の使用例がある。また、室町時代後期の資料には「濡れ手の粟」という表現も見られるが、やはり正しくは「濡れ手で粟」。
ちなみに『日本俚諺大全』とは、明治から昭和にかけて活躍したジャーナリスト宮武外骨が発行した『滑稽新聞』に連載された記事をまとめた風刺雑誌の事。
ちなみに、河竹黙阿弥作の『三人吉三廓初買』という歌舞伎の登場人物、お嬢吉三の名台詞にも、
「月も朧に白魚の篝も霞む春の空、冷てえ風も微酔に心持よくうかうかと、浮れ烏のただ一羽塒へ帰る川端で、棹の雫か濡手で粟、思いがけなく手に入る百両、[御厄払いましょか、厄落し(という厄払いの声)]ほんに今夜は節分か、西の海より川の中、落ちた夜鷹は厄落し、豆沢山に一文の銭と違って金包み、こいつぁ春から縁起がいいわえ」
といったものがある。
粟とは?
五穀の1つとしても知られるイネ科の一年草植物。
9月頃、茎の頂に1本の太く長い円柱形の穂となって咲く小さな緑色の花が特徴。高さ約1.5m。実は黄色くて小粒。
粳と糯があり、お米と混ぜて粟飯や粟餅にして食べたり、酒や飴などの原料や小鳥の飼料としても使用されている。
粟そのものはドライで軽い。
粳と糯
粟・稲・大麦などの作物の事。
粳とはいわゆる白米の事であり、アミロペクチン・アミロースという成分をそれぞれ20%・80%ずつ含まれており、炊いた時に粘り気の少ない品種。
一方糯とはもち米の事で、こちらはアミロースがほとんど、もしくは全く含まれておらず、アミロペクチンほぼ100%。炊いた時に粘り気が強く、お餅を作る事が出来る。
「意味」たいした苦労もなしに、楽々と大きな利益を得る事
濡れた手で粟を掴めば、手の平に粟粒がたくさん付いてくる。
この事から転じて、骨を折らずに楽々と大きな利益を得る事。
「ことわざのイメージ」
努力もせずに楽して何かを得ようとしたり、成し遂げようとする様子。
「使い方」濡れ手で粟
大当たり!

なるこさんや、ちょっと聞いておくれ!



そんなに慌ててどうされたんですか?



そうしたらなんと特賞の温泉が当たったんじゃ!



濡れ手で粟ですね



たまにはゆっくりするのも良かろう



「例文」悪い例・良い例
似て非なるもの
先日お買い物に行ったら、欲しかった洋服がセール価格になっていたので、思いがけず安く買う事が出来た。
凄く得をしたし、まさに濡れ手で粟だ。
それは棚から牡丹餅ですね。
このことわざと「濡れ手で粟」は、非常に混同しやすく間違いやすいので気を付けましょう。
これこそまさに!
親戚のおじさんが棚を作るというので、僕は少しお手伝いをした。
軽い材料を運んだり支えたりしただけなのに、お駄賃を5,000円も貰えた。
やったー!濡れ手で粟の大儲けだ。
運ばせて・・・支えさせて・・・
と思わず言いたくなっちゃいます。
棚を作れるおじさんも、とても素敵ですね。
「類義語」濡れ手で粟 2つご紹介
一攫千金
苦労せずに、一気に大金を手に入れる事。
一攫千金の「一攫」とは、一掴みの事。
ただ「攫」という漢字は常用漢字ではないため、「獲」を当て字で使用した「一獲千金」という書き方もある。
紀元前230年頃に使われたのが最初だと言われている。
その昔中国で、秦の始皇帝の世話をしていた呂不韋という人物が、自身の優れた能力や人柄に関心を持った1万人以上の人々を利用し、自身の功績をまとめる様に指示して出来上がった『呂布春秋』という、百科事典の様に分厚く呂不韋の功績がびっしりと書かれている書物。
これを自負する呂不韋が、この呂布春秋から一文字でも編集を加える事が出来たら大金を与えると言った所から、「一攫千金」という言葉が生まれた。
漁夫の利
争い事の最中、隙を見て第三者が利益を横取りしてしまう事。その様子。
中国での戦国時代、燕と趙という2つの国が争っていた時に、縦横家である蘇代という人物が「この争いで民衆が疲弊すれば、両国が強大な秦に滅ぼされてしまう」と忠告をした。その際に、
「蛤が口を開けていると、鳥の鴫が飛んできて蛤に食いついた。しかし蛤は貝を閉じて鴫の嘴を挟んだ。
お互い一歩も引かずに争っていると、そこへ猟師がやってきて鴫と蛤を簡単に捕って行った」
という例え話をしたのが由来となっている。
縦横家とは
❝しょうおうか❞とも読む。
中国の戦国時代にて活躍した諸子百家の1つ。
特に各国間の政略を論じた人々の事。
「対義語」濡れ手で粟 2つご紹介
骨折り損の草臥れ儲け
疲弊するほど労力を使ったにも関わらず、思っていたより利益や結果が出ない事。
このことわざは、次の様な説がある。
こんにゃく屋を営んでいた権兵衛は、こんにゃくの売れ行きが悪い事に悩んでおり、どうしたら売れるのかを考えた末、こんにゃくを大きくする事にした。
その結果お店は大繁盛となり、すぐにこんにゃくは売り切れた。
しかし、売値が元の値段のままだったため、ほぼ原価でこんにゃくを売ってしまった事に気付く。
労力を掛けた割にほとんど利益が上がらず、ただ疲弊しただけの権兵衛のこの姿をことわざにしたのが「骨折り損の草臥れ儲け」だ。
「草臥れ儲け」とは、疲労を得た事を意味する。
権兵衛が種蒔きゃ烏がほじくる
せっかくした努力が実らない事。苦労して行った事を他の者が台無しにしてしまう事。
権兵衛が蒔いた種を烏が食べてしまう事から、せっかく努力をしたのに他の者が台無しにしてしまう事の意味を指す。
権兵衛とは、民話の題材になった人物で、武士の家に生まれたのに農民となった。
慣れない種蒔きで失敗したが、努力を重ねて村一番の農民になった。
そんな彼は、村人のために尽くし、大蛇を退治しようとして亡くなった。
彼が種蒔きで失敗した話は民謡でも歌われており、「三度に一度は追わずばなるまい」と続く。
「英文」濡れ手で粟 2つご紹介
To make one’s fortune at one stroke
意味:一気に大金を稼ぐ
・to make=作る ・one’s fortune=自分の財産 ・at one stroke=一気に
On the gravy train
意味:肉汁電車で
・on the=~で ・gravy=肉汁 ・train=電車
gravy trainは「うまい立場」という意味にもなり、大した努力もなしに利益を生み出してくれる収益の源泉を表現する時に用いられる。
まとめ
濡れ手で粟とは
「たいした努力や苦労もなしに、楽々と大きな利益を得る事」でした。
皆さん、覚えましたか?
栗でも泡でもなく、粟です!!
もうこのことわざで、あわあわしなくて済みそうですね。
この記事を読むだけでこんなにたくさんの事が知れちゃうなんて、
まさに濡れ手で粟ですね。
・・・なんてね。
以上、濡れ手で粟について解説致しました。
最後までご覧くださりありがとうございます。
・泡ではなく、粟
・濡れ手にではなく、濡れ手で
・「棚から牡丹餅」は、似て非なることわざ
最近、母から偶然もち米を頂きました。
ついてお餅にしたりおこわなどにせず、そのまま炊いて食べているのですが、充分美味しいです。
もちもちとした食感がクセになりそうです。
皆さんもぜひ1度、そのまま炊いて召し上がってみてくださいね。
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